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人妻VSお嬢様
かつて岩波で読んだことがある作品だが、読んだのがだいぶ前のことだったというのもあり、新訳で改めて読んでみた
新訳で文章がかなり読みやすくなったのもあるが、さらにこの文庫では時代背景や金銭についての解説が上巻の終わりについている。簡単な説明だが、自分のような歴史に疎い人間でもこの小説の背景が非常に分かりやすくなり大変ありがたい
さらに栞に主要登場人物と簡単な説明が書かれているのも大変便利。そんなところにも読みやすさ、とっつきやすさへの追求が見られる
やはりこの作品はいい。文学にしては珍しく(?) テンションが上がる
野心に満ちた主人公ジュリヤン、人妻でありながら乙女のようなレナール夫人、厳格だが愛情深いピラール神父、英雄を夢見る侯爵令嬢マチルド……登場人物がそれぞれ魅力的
貧しい農民のせがれであるジュリヤンが、才気と美貌でのし上がっていくサクセスストーリーでもあり、恋愛小説でもあり、歴史小説でもある
ジュリヤンは数多ある文学の主人公の中でもとりわけ魅力的な人物の一人ではないだろうか。野心家でプライドが高いくせに、繊細で非常に感じやすい。自ら力強く運命を切り拓いていくように見えて、ふと脆い面が見えてしまうアンバランスな感じがたまらない
そのジュリヤンが恋する二人の女性だが、先日友人との会話でも意見が対立したのだが、自分はマチルドの方が好きという、おそらく少数派であったりする。彼女が本気で恋に落ちたときの、一途で過激で無敵なさまが大好きだ。自分を殺そうとしたという理由で相手に惚れるというのもすごい
「あなたは私の主人、私はあなたの奴隷よ(中略)いつまでも私を支配してちょうだい」(下巻p.284)
なんかこのあたりの台詞はたまらないです。それなのにあっさり恋心が消えてしまったり……最後はジュリヤンにすっかり恋をしてしまうと分かっていても、彼女にはやきもきさせられた
ラストで彼女が憧れた先祖をそっくりなぞってジュリヤンの首を抱えるシーンは胸が震える。この尋常じゃない場面で、自分にとっての彼女に魅力は最高潮に達した
それにしても、神学校は本当に陰険で嫌だ。ヘッセの『車輪の下』も神学校に馴染めず、主人公の精神がやられてしまう話だったっけか?まあそっちは確か教育法の問題だった気もするが、どちらにせよ神学校はいいイメージではない。でもどちらも身分のないものが身を立てる機会の場として描かれているのも事実ではあるが
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