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鼻/外套/査察官 /ゴーゴリ

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★★★★★

この翻訳の文体はとても面白い。おそらく作品のイメージをガラッと変えてしまうくらいの思い切った試みだろうと思う
旧訳との比較をしたわけではないが、作品の雰囲気にはよく合っているように思われた。もともとがかなり滑稽な話なので

・鼻
鼻が取れて一人歩きしだすという意味不明な話。幻想小説の中でも、想像不可能なタイプのもの
知人はこの作品の、パンの中から鼻が出てくるというくだりを読んで、しばらくパンを食べる気がしなかったらしい
鼻が取れるとか歩き出すとかあり得ない事件が起こるのに、登場人物はすぐにそれに順応してしまう。それがまた奇妙な感じだ
ものすごく馬鹿げた話だが、鼻がなくなることが自尊心に決定的な影響を及ぼすことや、鼻が持ち主本人より官位が上であることから、何か意味深いものも感じる。とはいえどうにも捕らえどころのない作品という気がした

・外套
なんとも言えない憐憫の情を起こさせる作品
外套一つこしらえるのにそんなに苦労するなんて……貧しくて苦しんでいたのは農民ばかりではなかったわけだ
ただ話としては『鼻』に比べるとさすがにインパクトに欠けるかな

・査察官
人間の醜さを嘲笑するかのような作品
とても笑えるのだけど、解説にもあるとおりあまり気持ちのいい笑いではないかな
それは欠点という意味ではなくて、そのようにして読み手に訴えてくるこの作品の魅力なのだけど
ここまで同情すべき人物も、共感できる人物も出てこない作品は珍しい。登場人物皆等しく、人の醜さ・愚かさを暴く作者の筆致の犠牲者だ

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