幻影の書 /オースター
★★★★★
突然失踪した映画俳優を巡る物語
登場人物が誰でもない存在になっていくというオースターの作品のメインテーマが、一つの頂点に達したという印象を受ける。映画俳優という存在がそもそも見られる自分という部分が分裂していく存在であり、また物語の後半では、人に見せるために撮影するものである映画そのものが、矛盾を抱えて引き裂かれる
映画を巡る深い考察、撮影に関する綿密な描写も見事
映画が現実を模倣すればするほど、逆に世界を表現することから遠ざかってしまうように思えた。結局のところ世界とは、我々の周りにあるのと同程度に、我々のなかにもあるのだ。だから私はかねてから、カラーより白黒の映画、トーキーよりサイレントの方が好みだった。映画とは視覚の言語であり、二次元のスクリーンに画像を投影することによって物語を語るメディアである。音と色が加わったことで、三次元の幻想が生じはしたが、同時に画像から純粋性が失われた。もはや画像がすべての仕事をやる必要はなくなり、その結果完璧な混合メディア、最良の空想世界が生まれるかと思いきや、音と色によって高められるはずだった言語がむしろ弱められてしまったのだ(p.16)
物語のラストは、理不尽とも思えるほどのやるせなさに満ちていて、『偶然の音楽』以来の衝撃を受けた。ただしこの作品は、後から振り返ってみると、このような終わり方しかなかったとも思えてくる。そしてタイトルの意味がしみじみと胸に沁みてくる。感動というよりは、深い余韻が残るという印象の作品
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