06 文学 その他

マーシェンカ /ナボコフ

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★★★☆☆

ナボコフの処女作だそうで
リアルな世界にほんのり幻想が侵入してくる、というのはもうこの作品から始まっているのですね
ちょっと人を食ったような、隣にいてほしくない感じの主人公像も
記憶の中にしかない、失われた初恋が、もう帰れない祖国を象徴している……と、ちょっと安易な気もするけれど、そういう話だと思う
亡命者の置かれている状況がそのまんまな感じで書かれているので、その意味でも興味深いかもしれない

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蜘蛛女のキス /プイグ

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★★★☆☆

ほとんどが監房にいる二人の会話という、変わった作品
同性愛に関するやたらと長い注がついていて、それの意味はわかるのだけど、ついてる場所に必然性があるのかがさっぱり分からない
登場人物の二人は、全然違うタイプの人間なのに、二人きりの会話の中でだんだんと距離が近付いていく
それが一方的なものなのかと思わせておいて、実は双方向的であったという仕掛けが面白いと感じた

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百年の孤独 /ガルシア=マルケス

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★★★★★

なんか今さらな感じもあるが、恥ずかしながら読んだことがなく
結構厚くて、読むまでは覚悟が必要だったけど、読んでみると結構読みやすい
名前が紛らわしいのにだけは気をつけなければいけないけど、一覧表があるからその点も安心
次々と騒ぎが展開していくので(カーニバル性と言うらしい)退屈しない。一気に読める
むしろ「百年」とあるからってじっくり読んでいてはいけない気がする。百年の時が怒涛のごとく流れ去っていくのを楽しむのが、この本を読む醍醐味ではないかと
そしてそんな馬鹿騒ぎの連続が行き着くところ、それがまたなんとも言えない
そこできっと、読み手はタイトルの意味について思いを巡らせることになるのではないだろうか

ところでこれをいつまでも文庫化しないでこの値段で売りつける新潮社に軽くない憎悪を覚えるのは自分だけじゃないはず

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存在の耐えられない軽さ /クンデラ

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★★★★★

一度聞いたら忘れられない強烈なタイトルのこの本
中身は非常に密度が高く、存在、肉体と精神、情欲、社会情勢など様々なテーマが、それほど多くはない登場人物を中心に扱われている
タイトルにもある軽さあるいは重さ、偶然と必然(Es muss sein!)など、ありふれた(と我々が思っている)二項対立を深く検討している部分も面白い
必然的に話の展開は早くないが、登場人物がそれぞれ立っているのもあって退屈することはない
とにかく作者の考えは独自性を持っていて面白い。しかもそれがあたかも登場人物の考えであるように自然と書かれていて、作者のお説教になっていないところがいい

解説がかなり詳しいのもありがたい

彼の小説においてはあくまで実存(=登場人物)は本質(=理論)に先立つのであって、思想、哲学はそれ自体として提示されるのではなく、(中略)つねに登場人物の「実存」の「主要な主題」「未知の側面」を探求するために必要な方便でしかないのだ。(解説 p.375 l.5)

なんだか自分が哲学的小説は好きでも哲学書は好きに慣れない理由の一端を見た気がする
きっと読者によってどの登場人物に共感したり、反発したりというのがあるでしょう。トマーシュなど反発を覚える人もいるかもしれないが、自分は大好きだ。彼が様々な女性と寝る理由を知ったときに好きになった
今回この作品を初めて読んだため、今までの版との違いなどは分からない。ただこれだけの完成稿があるのならかつてのものをわざわざ比較に読む必要があるのかが疑わしくも思える

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怪人エルキュールの数奇な愛の物語 /カール=ヨーハン・ヴァルグレン

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★★★☆☆

19世紀ドイツが物語の中心となり、当時の風俗を描いた小説としても面白い
娼館、布教活動、異端審問、見世物小屋、公開処刑などなど……舞台が様々に展開していくので飽きない
ただ要のエルキュールとヘンリエッテの物語はやや物足りない気がした。出会いも別れも唐突過ぎる。ここはゆっくり展開して欲しかった
まあ自分はこのような長い時間の物語がそもそもあまり得意ではないという点を考慮しなければならないかもしれないが
復讐の鬼と化すエルキュールも個人的には好きだ。救済は唐突過ぎると思ったが
それと、もっと語りの視点がエルキュールの内面に及んでくれたらよかったのに、とつい思う
詩のようにつむがれる愛の言葉はとても良い。文章もなんとなく19世紀を感じさせる(?)
言語の事にも結びで触れられている。実際に手話中心の共同体なんてものがあるのかどうか知らないし、その他の記述もどこから来ているのかは分からないが、大変興味深かった

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魅惑の集団自殺 /パーシリンナ

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★★★☆☆

フィンランドのベストセラーだそうだタイトルが秀逸で思わず買ってしまった。
この本を見つけたときに丁度自殺への興味が高まっていた(自分がするという意味ではない)という事情もあるが
ある実業家が自殺しようとしたら、死に場所として選んだ小屋には先客がいた。ひとまず自殺を延期した二人の間には友情が芽生え、同じように自殺を考えている人たちに呼びかけ、孤独な自殺から救おうと思い立つ。手段自殺という形で
そうして集まった人々はバスに乗って北の果てへと旅立つが……

全体的にユーモアに溢れていて、テーマの割に暗さを感じさせない。自殺志願者のそれぞれのエピソードも、中には深刻な問題を抱えている人もいるが、それよりも目に付くのは半分笑い話みたいな不幸な失敗談だ
結局この旅は、自殺と死を意識し続け、そして同胞たちと理解・共感しあうなかで生の素晴らしさを認識する旅となる。この本のテーマは結局生にある。自殺というのはそれを考える一つのモチーフという気がする
一回目の自殺の場面は特に印象的で、自殺の覚悟をしたはずの者でさえも、死に際して感じる強い恐怖、生への執着が描かれている
それ以降はどんどん登場人物の心が自殺から離れていく。読み手も途中で自殺が成し遂げられるとは全く思わなくなるだろう
ただそれだけに、半ば事故のようにスイスで死ぬ男の話はインパクトがあった。この作者なかなかきつい
もう一つ、自殺集団の足取りを追ううちにストレスで死んでしまう警察の男。これは皮肉すぎる。ただそれさえも暗い影を投げかけるというよりは、死を(そして間接的に生を)軽くしてしまうブラックユーモアという気がする
ストーリー自体魅力的な本だが、もう一つ面白いのはなかなか文学を通して知ることはできないフィンランドの様子が描かれていることだ
何かと「福祉が充実」とか言われて理想化されがちな気がするが、フィンランドもまた悩める国のようだ
しかもその悩みが結構日本と似通っているような気がする。特に余計な広告により常に不足しているという気持ちを抱かされるということだとか
勿論遠い北国らしいエキゾチズムも楽しめるし、ヨーロッパ縦断の旅も魅力たっぷりだ

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予告された殺人の記録 /ガルシア=マルケス

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ガルシア=マルケス、今さらながら初挑戦
初めは何がなんだか分からなかった。読むのをやめようかと思ったくらいだ。後から考えればこれは効果的な書き出しだったわけだが
まずこの作品で描かれている事件そのものが面白い。タイトルとも相俟って、早く事件の全貌を知りたいという欲求に駆られる
端的で印象的な描写も、読みやすくそれでいて退屈しない。不思議な迫力とユーモアがある。伝聞のセリフが直接多く書かれているのもいいのかもしれない
もう一つ面白かったのは、ある種の異国情緒だろうか。西洋でも中国でも異国は異国なのだが、特に文学に関しては、西欧のものはありふれているし、比較的取り入れる努力をしてきた文化であるわけだが
そういった「翻訳で馴染んだ景色」と、この作品に表れる景色は全く違う。風俗も、習慣も、倫理も。馴染みない共同体の姿を覗く面白さもこの作品にはあるかと

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